観光地や璧地などで他の産業のない地方都市へ企業が進出するということについては、そのリスクについては事前にじっくりと検証しておくべきでないでしょうか。
自分の会社が、ここ佐賀県の唐津市という大手企業が進出しない地方へ進出したことのデメリットが工場建設後の約10年経過にわかりました、アラフィフ管理人のおかけんです。
そして、そこへ赴任させられた社員の立場での苦悩をご紹介します。
決して、唐津の文化や習慣を否定するものではありませんことを事前にお断りしておきます。
あくまでも、適切な企業の立場からのあり方についての私個人の考えとして捉えていただければ幸いです。
地方都市に進出するメリットとデメリット
数年前から大手企業が自社工場を地方都市に建設する傾向があります。
山口県の光市や石川県の七尾市(能登半島)、群馬県の赤城市などにその実績があるようです。
これらの地方では、企業の本社や研究施設など小規模ではない大規模な土地が必要になる工場を建設するには土地の値段が安いということからきているようです。
そして、地方都市では人口が少なく、産業もないことから市や県が企業誘致を行い、その助成金で、建設費用の30%程度を削減できることもその要因となっています。
さらには、一昔前には多かった中国などに工場を建設して人件費を削減するといったこともありましたが、その反面、品質が低下するという悩みがありました。
そのため、国内の地方都市に建設することにより品質の低下を防ぎ、大都市より人件費が削減できるというメリットがあることからこちらに移行した企業が多いようです。
私の勤める会社も例に漏れず、佐賀県唐津市という地方都市に企業誘致を受け、その助成金が建設を決定させました。
また、人件費においても本社の所在する大阪では最低賃金が約900円であるのに対し、唐津では約700円という低賃金で人件費の削減が見込まれることも要因となったようです。
ここまでは企業にとってのメリットです。
デメリットとしては、産業の少ない地方です。
存在する会社といっても20~30人規模の零細企業がほとんどで、会社法に基づいた規約や賃金体制、福利厚生、社会保険制度などのない会社しかありません。
そこへ、1000人規模の会社が進出しても、地域との感覚、温度差には大きな開きが見られます。
例えば、地元から従業員を採用しても社内規定のあるような会社で働いたことのない人ばかりです。
ですので、給料は同じであるにも関わらず規約で縛られることで窮屈なため不満が出てくるだけです。
「前の会社は有給が年間60日もらえたのに、この会社は40日しかもらえない」
「前の会社では、仕事が早く終われば2時間くらい早めに帰らせてくれたのに、この会社は帰らせてくれない」
いえいえ、これは労働基準法で定められた法に則り作られた会社の規約ですから、と突っ込みたくなるような不満が社内のあちこちでたらたらと流れています。
さらに、関西に本社があるので取引先が関西以東になります。
そのため、関西の事業所以上に流通が不便な上に資材や原料等の輸送費用が莫大にかかります。
そのため、いくら人件費や建設費用が抑えられていたとしても結局は、数年でそれらを超える流通費用がかかってしまいます。
これらが企業におけるデメリットです。
その影響がどこにくるかといえば、さらなる人件費の削減です。
正社員の雇用を減らし、契約社員や派遣社員のような非正規雇用社員を増やすことによる削減、また単純に社員の減給など。
3人の人間が必要な業務を2人にすることによる工数削減など、従業員の労働量の負担が大きくなることにもつながります。
また、工場施設の面での社員食堂の廃止、冷暖房設備の停止なども実際に行われており、労働環境の悪化にも繋がることとなっています。
これらが私が感じているデメリットの一部です。
さらには従業員の心的病の原因にも
私の会社の例をあげますと関西と九州ではあまりに環境の違いが大きすぎます。
それだけでも心的な負担の原因になります。
さらに人件費の削減のための業務過多、減給などにより負担は大きくなります。
その証拠に私の勤務する工場では、年間に数人のメンタルダウン、いわゆる「うつ病」による休職者が出ています。
わずか100人程度の工場で毎年数人のメンタルダウンによる休職者が出るということは他の事業所に比べて、余程の環境の悪さがあるものと捉えられることができます。
その反面、退職者が少ないということもあります。
これは、この会社を退職してしまうと他に働くところがないためという理由で、ここで働きたいということではありません。
よく取引先の方が来工されたときに「綺麗な景色のいい環境のところですね」と言われます。
しかし、実際にそこに住んで生活している私にとっては毎日が不安でしょうがないというのが本音です。
このような不安定な精神状態のため、持病の精神疾患のパニック障害の症状が転勤前より悪い状態になってしまいました。
パニック障害の症状と対処法。発症してから19年間の体験談と付き合い方
ではどうすれば良かったのか、社員の立場から考えてみた
私は会社の役員でもなければ管理職でもありませんので、会社の経営に関してどうこう口出しできる立場にありません。
しかし、これまでの経験から身につけた生産技術、大学で学んだ経営学から考えるとこの地に進出したことは決して適切な選択ではなかったと感じています。
まず、佐賀県でも南部にはそれなりの産業がありますが、ここ北部には産業がありません。
その原因を考えるべきだったのではないでしょうか。
企業誘致を受けて助成金で建設するなら、地元から従業員を採用する必要があります。
しかし、地元には産業が少なく、零細企業しか存在しません。
その環境の中で生活してきた人たちを従業員として受け入れることでギャップが生じるということを事前に考えておくべきだったでしょう。
また、流通の面においても昨今はタイムリーな対応が要求されます。
佐賀県の南部では新幹線や高速道路が都心部からスムーズにつながっており、ハブを介して本州へのアクセスもスムーズに行えます。
しかし、北部の唐津市はJRのローカル線が1本通っているだけで非常に本州へのアクセスが悪いのです。
これが、南部には産業があるのに対して、北部にはないことの決定的な原因ではないかと推測されます。
このように安易に地方都市への進出を企業がしていくと問題が発生します。
経営的なこと、環境、従業員への負担などを十分考慮した上で検討していただきたかったというのが私の考えです。
もう50代となり会社に役員として残ることもなく、10年以内に退職することが見えていますが、それまでの間勤めるだけでも辛いものがあります。
会社員は一方的に会社のやり方に従う時代は年功序列の時代とともに終わったと思います。
また、地方への企業の進出が悪いとは思っていません。
それでメリットがあるなら、どんどん推進してくべきだと思います。
しかし、このようにデメリットの方が大きくなってしまう場合のことを世の中の経営者の方々は十分に考慮していただきたい。
そして、企業は社員が安心して業務に取り組めるような環境を作ることが今後の事業拡大や成長の基本につながることではないでしょうか。
その証拠に「遊んでいるような会社」が急成長を遂げていますよね。